「分散」の落とし穴
世界的に有名なある投資顧問会社の勉強会に参加する機会がありました。
不透明な環境における資産構築の考え方を伝える、一般生活者向けのセミナーです。
そこで強く主張されていたのは、資産運用の安定を生み出すためには、徹底した資産分散が大原則だということ。
一般的に、投資対象となる主な資産には、「株式」と「債券」があり、この2つは、「伝統的資産」と呼ばれています。
伝統的資産に対して、不動産・金・原油・レアメタルなど、株式と債券以外の資産を、「オルタナティブ(代替)資産」といいます。
今回の勉強会では、投資対象資産をオルタナティブにまで広げることが効果的だというものでした。
確かに、もしそれなりのまとまった資金があって、リスクを少なくして資産をできる限り目減りさせない運用を目指すのであれば、それもありかもしれません。
しかし、投資対象の中身を複雑にするということは、購入者が負担するコストが増えていくということでもあります。
実際にこの投資顧問会社が扱う商品を見てみると、手数料や信託報酬というコストがかなり割高です。
ただ何よりも僕が思うのは、オルタナティブ資産のどれをとっても、価格は需要と供給の関係で決まるだけで、それ自体が価値を生み出すわけではないということ。
もちろん、株価も短期的には需給関係で決まりますが、基本的には、その企業が生み出す商品やサービスが世の中をより良くし、売り上げが増えて利益も増えれば、その企業の価値も大きくなって長期的には株価の上昇につながっていくのです。
投資の成功のためには、価格を追うのではなく、価値を追うことが大切です。
僕たちが普段の生活に欠かせないモノやサービスの多くは、株式会社などの企業によって生み出されています。
このように考えると、いくら分散の考え方が大事だとはいっても、基本的にはオルタナティブなどのよくわからない資産に手を出すよりも、シンプルに株式を投資対象にすることこそが、より明るい未来につながり、長期的には大きなリターンとなって、いずれ自分に戻ってくるのだと僕は考えています。