「老後資産2,000万円不足」問題の、正しい考え方
年金以外に老後資産として2,000万円が必要との試算をまとめた、金融庁の報告書。
金融庁としても、こんなに大きな議論を呼ぶとはまさか想像していなかったのでしょう。
ネットニュースのコメントを見ると、そのほとんどは、報告書なんて読んでいないだろう、と思える内容なのですが、批判・怒り・諦めなどのネガティブな反応が大半です。
読んでいないのに批判するのは論外ですが、テレビや新聞などの大手メディアにせよ、ネットでの匿名コメントにせよ、読んだうえでの議論も的外れな内容が多い印象を受けますので、僕が考える、本当に大事なことを書いておきたいと思います。
まずは、報告書の内容を一言でまとめると、
「このままだと年金だけでは老後2,000万円不足するので、資産形成のために投資しましょうね」
ということ。
これに対して、有名無名の多くの方々は、
「100年安心の年金って言っていたくせに、政治家は一体何をしているんだ!」
「金融機関を儲けさせるために、国民に投資をさせようとしているんだ!」
という調子で発言しています。
ここで、整理しておきましょう。
論点を、①「年金だけでは老後資産が2,000万円足りない」ということと、②「資産形成のために投資しなければいけない」ということに分けて考えてみます。
まず①についてですが、そもそもの前提として、政治家がどんなにがんばっても、今後年金を受けとる高齢者の数が増え続け、一方で税金や年金の保険料を支払う現役世代の数が減り続ける状況が、今後少なくとも数十年間は続く以上、年金額は少なくなっていかざるをえない、という現実をみんなが認識しておくべきです。
政治家の肩をもつわけでは全くありませんが、1年間に50兆円以上の額が現役世代から高齢者に仕送りされている現状では、たとえ政治家が無給で働いたとしても、焼け石に水でしかありません。
そのうえで、2,000万円という金額は、あくまでも平均であって、実際にいくら必要かなんて、誰にもわからないのです。
じゃあどうするのか。
②に進みます。
報告書の論理では、資産形成するために投資が必要、という流れです。
間違いではありませんが、本質ではありません。
むしろ、順番が逆です。
そもそも、なぜ投資をするのかというと、より良い未来をつくるため、明るい世の中をつくるため。
多くの方は、投資というと、儲けるか損するかのギャンブルと同じように考えているようです。
それは、「投機」です。
僕は、たった4人でやっている小さな会社ですが、他にはない、自分の考えるより良い介護サービスを提供したいという想いで、自分が貯めてきたお金を投資して、施設をつくり、運営しています。
一般に、一人ひとりの生活に欠かせないモノやサービスの多くは、株式会社によって提供されています。
投資の主な対象は株式ですが、将来も必要であってほしいと思う会社の株を買う、というたくさんの人々の行為を通じて、より良い世の中につながっていくのです。
投資とは、自分の想いを思いっきり込めるもの。
そこには、自分だけ儲けたい、損したくない、という計算づくの考えはありません。
株を買うという行為を通じて、その会社を応援することになるのです。
自分だけがうまくいくなんていうことはありえません。
みんなが幸せになるから、自分も幸せになるのです。
もちろん個別の株を買おうとすればまとまった金額が必要ですが、「投資信託(ファンド)」という仕組みを通じて、自分のフィーリングに合う、これぞと思えるファンドを選び、毎月毎月少額から積み立てていくことで、結果的に資産形成ができていくのです。
しかも、長く続ければ続けるほど、雪だるま式に資産が大きくなっていくのです。
僕自身、執筆時点で18年間コツコツと毎月同じファンドに同じ金額の積み立て投資を継続しているので、自信を持ってお伝えできます。
多くの人々が、お金がなくて不安だと考えますが、本当に大変なのは、勝手に大きく増えてしまうお金をどう使うのか、考えることです。
世の中をよくするための、かっこよいお金の使い方。
簡単ではありませんが、考えるのはとてもワクワクすることです。
老後の不安なんて、考えるだけ無駄ではないでしょうか。
ほんの少しの勉強は必要かもしれませんが、細かいことはあまり考えないで、できるだけ早く、できる範囲で投資を始めることが、みんなが豊かになって、自分も豊かになれる、最良の方法だと思います。
まずは、お金を手放すことからはじめてみましょう。
ギブ・ギブ・ギブ、とことんギブ。
いつかきっと、お金には代えられない、大きなリターンを受け取ることができるはずです。