資格を取ることで、失うもの
中学生や高校生の子どもをもつお母さんがたが、よくおっしゃいます。
「やっぱり、これからの世の中、資格を取っておいたほうがいいですよね。まわりのお母さんたちも、みんな言っていますよ」
「松村さんは理学療法士ですが、看護師と理学療法士、どっちが将来有望ですか?」
なかなか、答えに困ってしまいます。
実際、近年は医療関連職種の資格取得熱は高く、少子化にもかかわらず、養成校の数は増える一方です。
まず、こうした医療関連職種に関してよく言われるのは、こんな感じです。
「高齢者の数は今後ますます増えるのだから、需要も増える。だから、資格を持っておくと有利だよ」
おそらく、多くの方がそう考えるのではないでしょうか。
確かに、高齢者の数自体は、2040年代まで増え続けます。
(1974年生まれ、団塊ジュニア世代の僕が高齢者になるまで、高齢者は増え続けます)
ただし、考えておかなければいけないのは、こうした職種が主に働く病院や介護施設の「値段」は、基本的に国が全部決めているということ。
しかも医療や介護にかかる費用(これが働く人の給料の元になるわけですね)のほとんどは、みんなが支払った保険料や税金によって賄われているわけです。
だから、高齢化の一方で、少子化が止まらない以上、保険料や税金を支払う現役世代の数も減っていくので、診療報酬や介護報酬という医療・介護の「値段」を思い切って下げない限り、国の財政は火の車。
病院や介護施設の収入が大きく増えていくことは期待しにくいので、結果としてそこで働く人の給料も、頭打ちにならざるをえません。
これは、いくら政治に不満を言ったところで解決するものではないのです。
なぜなら、この国の人口構造は、移民を大量に受け入れない限り、基本的には変えられないから。
では、どう考えるか。
今後、医療・介護職に限らず、どんな業種・職種においても、平均的には給料は下がっていくと考えておいたほうがいいと思います。
(上がればラッキー、でいいではないですか)
こうした中で、何らかの資格を持つメリットは、ないよりはあったほうがマシ、とはいえるかもしれません。
一方で、資格を取るデメリットが語られることは、めったにありません。
一度資格を取ってしまうと、(それが取得困難な資格であればあるほど)職業選択時にその資格に関連する仕事しか見えなくなってしまい、もしかして他にもっとおもしろい仕事があるかもしれないのに、なまじ資格があることで選択肢を自ら狭めてしまう可能性があるのではないか、僕はこんなふうに思います。
だから、資格を取る取らない、どっちの資格がいいか、よりも、好きなことをやる、やりたいことをやる、おもしろそうなことをやってみる・・・これこそが、仕事選びの基準でしょう。
「看護師の仕事をしたいから看護師の資格を取る」というのは正しい考え方(というか当たり前)ですが、「資格があったほうが安定するだろうから看護師の資格をとる」は、おかしいなあ~と思います。
看護師の資格を持っているのに、看護師の仕事をしていない人、いっぱいいますもんね(もちろん様々な事情はあるでしょうが)。
そもそも、なぜ「資格」にこだわってしまうのかを考えていくと、多くの場合、将来のお金の不安に行きついたりします。
だからこそ、FP的なアプローチでまずはお金の不安を解消してしまえば、お金にしばられない、だから資格にもしばられない、自立した生き方を実現できるのだと確信します。
資格などにこだわらないからこそ、見える世界があるのだと思います。
その世界こそが、自らの収入を最大化させてくれるのだと思います。