保育士・介護士の高い離職率。安心して仕事を続けるために、必要なこと
2018年8月20日の日経新聞に、「潜在保育士掘り起こせ」「資格あっても働かず 50万人?」「待機児童解消の切り札に」との見出しで、保育士の深刻な人材不足について書かれています。
保育所に入りたくても入れない待機児童問題。
我が家でも、3人の子どものうち1人目と3人目が一時期、待機児童になった経験があるので、この問題は痛いほどわかるつもりです。
一方で、僕自身が働いている「介護」の領域。
加速する高齢社会において、介護士の不足も保育士以上に深刻と言われています。
保育・介護いずれにも共通しているのが、離職者が多く、特に不満が最も大きいのが賃金水準が低いこと、とされていることです。
そして、資格や経験があるのに働いていない、「潜在」保育士・介護士になっていく・・・
記事中で、識者と呼ばれる、業界では著名な人たちが、次のようにコメントしています。
「他産業に比べて遜色ない賃金が欠かせない」
「保育園や自治体が賃金を上乗せしていくことも必要だ」・・・
確かに、一見まっとうな意見のように思えます。
でも、極めてノーテンキな発言だと言わざるをえません。
そもそも人材不足はもう何年も前から叫ばれていること。
賃金を上げればよいなら、既にそうしているでしょう。
でも、なぜできないのか。
政治家が無駄遣いしているから?
確かにそれもあるのかもしれませんが、その無駄をぜーんぶ福祉にまわしたとしても、焼け石に水滴のようなもの。
では何が本当の問題なのか。
それは、がんばって働いて税金や社会保険料を納めている現役世代の人々が、どんどん減っているからなのです(だから政府は高齢者や女性にもっと働け、働け、と叫んでいて、働ける人が働くことは尊いことなのですが、それでも限界があります)。
しかもこの先数十年にわたってさらに働く人が減っていくことが確実です(大規模に移民を受け入れれば別ですが)。
保育も介護も、その賃金は国が決める公定価格がベースになっています(これも共通していること)。
政府が集める税金も保険料もますます減っていく中で、そう簡単には保育や介護(いわゆる社会保障費)に財源をまわせず、賃金を上げたくても簡単には上げられないのが現実なのです(財源確保のために今以上に借金を膨張させ続ければ、やがてお金の価値が目減りして、この国に住むみんなが痛い目に合うでしょう)。
現役世代の減少自体をすぐにどうすることもできない以上、もはや賃金が上がることを期待できないという前提に立つべきです。
では、どうすればよいのか(ここにこそ、僕が介護の仕事に携わる中で、FPの存在意義を強く感じた立脚点があります)。
資産形成をすればよいのです。
まとまった資金がないのにどうしたらいいの?と思われるかもしれませんが、それは誤解。
まとまった資金など不要で、決して難しいことではありません。
毎月の収入から、少しずつでも資産にまわしていけばいいのです。
例えば20歳から60歳までの40年間、毎月2万円ずつ積み立てていけばいくらになるでしょうか。
2万(円)×12(ヶ月)×40(年)で、960万円。
さらに、それを適切に運用しながら積み立てていけばどうなるか。
ところで、この国ではもう何年も物価も賃金も平均的にはほとんど上がっていませんし、経済成長率も日本はおろか先進国全体を見渡してもせいぜい1~2%とか。
預貯金の金利も限りなくゼロに近い状態にへばりついています。
一方で、資産の収益率(資産がどれほどのお金を生み出すか)というのは、実は世界全体の平均をみれば、過去数百年以上にわたって、年平均4~5%と安定しているのです(資産というのは、昔は農地などの土地、今では株式などの金融資産が中心です)。
具体的に計算してみましょう。
40年間、毎月コツコツと2万円を積み立てて、40年間の年平均利回りが5%だとすると、なんと3,052万円にもなるのです。
僕自身、20代のころから毎月の給料からコツコツと積み立てていたことで、36歳で起業して介護施設をつくったときも、この資産をもとに金融機関からお金を借りることができ、当面の費用を賄うことができて、今に至っているのです。
お金の知識を持っているかどうかで、お金に対する見方が変わっていきます(たとえ給料が安くても、本当に保育や介護の仕事が好きなら、お金の不安なく続けられるのです)。
この経験を、どうか多くの方にお伝えしたい。
そんな想いで、FPの仕事に取り組んでいます。