公的年金の不安を解消するために、「個人年金保険」をおすすめしない理由

公的年金に対する不安を、多くの方が感じておられるようです。

そもそも公的年金の仕組みを簡単にいうと、現役世代の人々が支払った保険料に、税金を一部付け加えて、それを高齢者など年金を受け取る資格のある方々に分配しているのです。

年金受給者が一人ひとり自分の分を過去に積み立ててきたお金ではありません。

とすると、今後はどうなっていくのか。

1974(昭和49)年生まれの僕の同級生は全国に200万人ほどいますが(「団塊ジュニア」といって、この世代をピークに出生数が減り続けています)、今生まれてくる赤ちゃんは、年間100万人を切っています。

そして少子化の流れは止まっておらず、今後も現役世代は少なくとも数十年にわたって減り続けると考えられます。

一方で、高齢者の数は増え続けており、少なくともいつまで増え続けるかというと、僕(団塊ジュニア世代)が高齢者になるまでですね。

ということは、今後数十年は、年金保険料を払う側がどんどん少なくなり、年金を受け取る側がどんどん増えていきます。

確実に、今後ますますもらえる年金額は少なくなるでしょうし、もらい始めることができる年齢も、もっと後になるかもしれません。

確かに、多くの人が不安になるのも無理はないでしょう。

ただ、この国の人口構成がこうなっている以上、それをどうこう嘆いても仕方ないことだし、こうした現実を前提として、あくまでも前向きに、今後のお金の不安をどう解消していくかを考えていかないといけません。

このような背景から、民間の「個人年金保険」を、不安解消の大きな柱として、保険会社はこぞってセールスしています。

こうした保険にお金を払い続けている方も多いのではないでしょうか。

個人年金保険の問題点を挙げ、慎重な判断を促すあるネットニュースの記事を見つけたのですが、それに対するコメントに、こんなものがありました。

「そうは言っても、公的年金よりは個人年金の方が確実にもらえますよね。我々庶民は、老後の生活に備えてコツコツ準備しておいた方が絶対いいです!」

さらに、このコメントに対する「賛成」がとても多かったのに対し、「反対」は数えるほどしかありませんでした。

多くの方々が、このコメント投稿者のように考えておられるようです。

危険です。

なぜ個人年金保険が危険なのか。

それは、「ギャンブル」だからです。

イチかバチかの賭け事だからです。

こういうと、多くの方が、「???」となります。

確かに、払い込んだ保険料以上の金額を、将来受け取ることができることが約束されています。

例えば現役の間に毎月毎月コツコツと合計500万円払い込めば、数十年後に年金として受け取ることができるのは合計600万円ほどになるイメージでしょうか。

これがどうしてギャンブルなのか。

それは、この試算に、時間軸が全く考慮されていないからなんですね。

つまり、今の100万円の価値が、数十年後も同じ価値であり続けるのか。

確かに、この国ではもう長い間ほとんど物価が上がらず、むしろいろいろなものの値段が下がっている現状もみられます。

でも、長い目で過去を振り返れば、例えば自分たちの親の世代の初任給は、自分たちの半分くらいだったのではないでしょうか。

さらにその上の世代は・・・

より長い時間軸で見れば、物価は上がり続けているのです。

極論ですが、今の現役世代が年金を受け取ることになる時代の物価が100倍になっているとしましょう。

だとすると、そのときの「600万円」は、今の価値にすれば、100分の1の「6万円」にすぎないかもしれないのです。

数十年後、結果的に物価が今とほぼ変わらず、やっぱり個人年金をやっておいてよかったね、となるかもしれません。

でも、物価が大きく上がる可能性もあるわけで、数十年後のことが(たとえ経済学者であっても)誰にもわからない以上(わかるという人がいれば、それは詐欺師です)、今の段階で、数十年後の価格が約束されてしまう個人年金保険は、ギャンブルでしかありません。

もし今すでに個人年金保険に加入しておられる方は、たとえ今解約して元本割れしてでも、少しでも早いうちに解約し、ギャンブルの世界から抜け出すのが得策であると、僕は考えます。