修繕積立金が十分に確保されているマンションなんて、あるのだろうか

今日の日経新聞に、「神戸市、全国に先駆けタワマン組合を認証」とあります。
自治体が分譲マンション、特に高層マンションの管理組合に対するチェック体制を強化し、監視の目を強めていこうとしている、という記事です。
都市部で相次いで建設されるタワーマンションは、大勢の所有者や居住者の合意形成に時間がかかり、長期的な維持管理の難しさが指摘されています。
超高層建築のために修繕費がかさみ、積立金不足などで十分な管理ができなければ、安全面や景観などの問題が大きくなるので、この認証制度を通じて、過度な開発を抑制する効果を狙っているわけですね。
記事によると、現在の修繕積立金が計画より不足するマンションが全体の約35%を占めているそうですが、「不明」も31%に達していますので、もしかすると今存在しているマンションの過半数が、積立金が足りずに十分な修繕工事ができないのかもしれません。
これ、衝撃的な事実ですが、まだまだこの記事、甘いのではないかとさえ思えます。
実際、積立金が十分に確保されているマンションなんてあるのかなあ~というのが僕の率直な感想です。
僕が知る西宮市内のマンションでも、数年前に大規模修繕工事を行い、幸い今のところは適切に維持管理されているといえそうですが、次の10数年後の修繕工事に向けて積立金を試算したところ、明らかに足りないだろうという結論で、積立金の負担がそれまでの3倍に増えることになりました。
試算表をもとに、現行の2.5倍、3.0倍、3.5倍の3通りの案が出され、3.5倍に賛成した人はほとんどなし、2.5倍と3.0倍が僅差で、3.0倍の案に決定したのです。
でも、僕はこれでも全然足りないと思っています。
議論の土台となった試算表を見てみると、向こう30年間にわたる長期計画として数字が落としこまれているのですが、物価上昇率が1%で計算されているのです。
(1%とはどこにも書かれていませんでしたが、そこはFPの力の見せどころで、記載された数字から逆算すれば簡単に求められるのです)
僕は、物価上昇率1%は、あまりにも楽観的だと思います。
もちろん、今はむしろ物価が下がっているのかもしれませんし、また将来の計画は何らかの前提に基づくものであり、そもそも未来は誰にもわからないのは当然です。
でも、冷静に考えてみましょう。
現役で働く世代の減少とともに、今すでにあらゆる業種で人手不足が顕在化しています。
(外国人労働者がどんどん増えていますね)
特に、「建設業」は、「介護」などと並んで典型的な人手不足の業種。
さらに、止まらない少子化。
一方で、都市部では、少子化にもかかわらず新築マンションをガンガン建てているのは統計を見るまでもなく明らかに感じること。
増えすぎたマンションに対して、工事に携わってもらえる職人さんがさらに不足していくのは、火を見るより明らかなのではないでしょうか。
そうなると、需要と供給の関係で、工事費用はますます跳ね上がっていくでしょう。
(それどころか、いくらお金を出しても、そもそも職人さんがいなくて工事すらできない状況も考えられます
積立金の話に戻ります。
新築マンションの分譲時、普通は誰もが限られた予算の範囲で購入を検討する中で、売り手側の立場としては、見かけ上の費用を少しでも抑えて購入を促したいところでしょう。
こうした背景から、修繕積立金も、本当は長期的にしっかりと維持管理できるよう手厚くしておかなければならないのに、どうしても安め安めに設定され、気が付けば積立金不足のマンションが大量供給されることになってしまうのです。
例に出した西宮市内のマンションは5階建て。
ましてや超高層のタワーマンションなんて、将来にわたってどれだけの維持費が隠れていることやら。。。
(いざ大規模修繕工事を行うにしても、超高層マンションに足場なんてかけられないでしょうし、工事費がどれほどかかるのか見当もつかないほどです)
(タワー)マンションの購入が良い・悪いというお話ではありません。
ただ、タワーマンションの建設・販売に関わる人たちはタワーマンションを買わない、というのは業界内でよく言われること。
冒頭の記事が記事になるくらい、後先考えずに開発して売って儲けて終わり、という傾向は強いのでしょう。
マンションに限らずですが、そもそもどんなものでも長く大切に使い続けることは良いことだし、大事なことだと思います。
そのためには、相応の維持費が必要だという当たり前のことを、認識しておきたいものです。
皆さんが、きれいなパンフレットと安めに設定された維持費に惑わされないことを、願っています。