FPは教えてくれない、確定拠出年金のよりよい受け取り方(受け取るのはまだ先という方にも、有益な内容です)

今日の日経新聞の連載記事「まだ育つ確定拠出年金」に、新規受給者が年金資産をどのように受け取っているかについて、現状と課題が書かれています。

確定拠出年金(DC)とは、事業主や加入者が掛金を拠出し、加入者自らがその資産を運用し、運用の成果により将来の年金受取額が決まる制度のこと。

DCには、企業が導入する「企業型DC」と、個人で加入する「個人型DC(iDeCoと呼ばれます)」の2種類があります。

DCの特長のひとつとして、掛金拠出時、運用時、受給時の税制優遇がありますが、今回の記事は、受給時に関する内容です。

受け取るのは通常は60歳以降になるので、まだまだ先のこと、と読者の多くの方は思われるかもしれませんが、これからお伝えしたいのは、いかに少しでも有利に受け取るか、というような小手先のテクニカルな話ではなく、投資の本質に関わることですので、どうかもうしばらくお付き合いください(小難しい税金の計算式も出てきません)。

年金資産の受け取り方には、一時金として一括でまとめて受け取るか、年金として分割して受け取るか、あるいはその併用か、の3通りがあります。

記事によると、なんと9割の方が一時金として一括で受け取っているそうです。

大きな理由の一つとしては、一時金として受け取る方が、税金面で有利な場合が多いからです。

では、支払う税金が少なくて済むからといって、一時金として受け取ってしまうことは、果たして正しいといえるのでしょうか。

答えは、「正しいかもしれないけれど、それだけでは不十分」です。

もちろん、たまたま受け取り時期にそのお金が必要になる場合は、何も問題はありません。

お金は使うためにあるのですから。

ただし、それなりにまとまった資産を、当面使う予定がないにもかかわらず受け取ってそのままにしておくだけでは、「木を見て森を見ず」もいいところ。

受給時の一時的な納税額のおトクさだけでなく、人生100年時代と言われるように、長期的な視点で考える必要があります。

だから、できる限り運用期間を延ばして分割で受け取るのが基本です(株式を中心とする投資信託に投資しているのが大前提です。理由はのちほどご説明します)。

または、税金面でのメリットをとって一時金で受け取る場合は、それまでDCで投資してきた投資信託の商品と同じもの、または同じものがなければ考え方が近い商品に、そのまま全額をすぐに投資すればよいと思います。

大事なのは、当面使う予定のないお金は、世の中の経済の流れに乗せておけばよいということ。

そして、使うときに使う分だけ引き出して使えばよいのです。

10年・20年・30年という長い時間軸で必要なときに必要な分だけ引き出せば、自然に時間分散もできるでしょう(相場が低調なときにすべて現金化するという事態を防げます)。

僕たちの日々の生活で利用するモノやサービスの多くは、株式会社などの企業が直接的・間接的に提供しています。

生活者すべての、少しでもより良い生活をしたい、という欲望が原動力となって今まで経済が成長してきましたし、これからも波はあるにせよ数十年、100年単位で考えれば成長していくと考えればよいのではないでしょうか。

であれば、これからも世の中に必要とされるであろう企業の株式を中心に構成された投資信託に、当面使わない資産を託しておけば、何も問題はないと思います。

記事によると、一時金で受給するほうが有利な場合が多いことに、企業年金の課題があると書かれています。

でも本質的な問題はそこではなくて、生活者に投資の本質を伝えることを専門家の多くが怠っていることにあると思います。

目先の短期的なおトク情報だけではなく、人生100年時代であるならなおさら、長期的な視点で考えることの意義を、僕はこれからも伝えていきたいと思います。